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ヒトでは不活化されている遺伝子が意外に多い

遺伝子変異のうち、重要なタンパク質が合成されなくなる、あるいは適切に機能しなくなる変異は、一般的にヒトの疾患と関連している。
ところが、こうした「機能喪失型」変異が実際にはヒトゲノムでは比較的多くみられることが、新たな研究で明らかになった。ゲノム配列決定研究で発見される機能喪失型変異の頻度は高いがこうした変異は真の遺伝子変異ではなく、配列決定時のエラーによることが多い。
ヒトゲノムにおける実際の機能喪失型変異の頻度を明らかにするため、Daniel MacArthurらは、1,000 Genomes Projectのデータをおもに用いて 185 人のゲノムを詳細に分析した。その結果、ヒトゲノムには推定で、通常約 100 個の機能喪失型アレルが存在することが明らかになった。
約 20 個の遺伝子では、両アレルに機能喪失型変異がみられ、遺伝子が完全に不活化されていた。
一部の変異は有害な作用を有したが、ほとんどの変異は良くも悪くも健康に影響を及ぼすことはないようであり、それ以外の変異は有益なようであった。
この判定はアレルの頻度に基づいて行われたが、この頻度は自然選択の影響を反映するものである。この結果から、ゲノム配列決定により遺伝子変異を同定する場合、それが真の機能喪失型変異であるのかを確認するために厳密な分析が必要であることが示唆される。
このことは、患者のゲノム配列に基づいて治療法を決定するテーラーメイド医療にとって重要な意味をもつ。関連するPerspective では Lluis Quintana-Murciがこの研究について論じている。


出典:Science 2012年 2月 17日号